【インタビュー】能楽の舞台で大鼓を演奏する若者に、フランクに話を聞いてみた

お世話になります。ヨーロッパ女子ひとり旅専門家のカジヤマシオリ(@Kindermer)です。

 

先日、名古屋能楽堂へ行ってきました。
人生で初めて、能の舞台を鑑賞。

 

 

ちょっぴり緊張しましたが、楽しませていただきました。

忙しい日常の中に、たまにはこういうゆっくりとした時間が必要だなあ…としみじみ。

あと、海人が成仏できたみたいで本当によかった!(演目のこと)

 

というのも、最近よく出入りしている「旅BAR 夢port」で知り合った、かわちゃんこと河村裕一郎さんと話したことがきっかけです

彼は名古屋を拠点に、能の舞台で大鼓を演奏しています。

彼にインタビューをしたうえで、実際に能の舞台を見に行きました。

 

能という無形文化遺産を受け継ぐ人として「おおっ!」と感じる部分もあれば、同年代の若者として「うんうん」とうなずける面も。

かわちゃんがどのように能と向き合っているのか。

能に対して「とっつきにくい」「よくわからない」と考えている人に知ってほしい、インタビュー内容になりました。

 

 

多分やりたかったとは思う。物心がついたときにはね。

 

 

カジヤマ
いつから本格的に、能の世界に?
かわちゃん
―確か、初舞台は6歳のときかな。祖父も父もやってるからね。

本格的に稽古をはじめたのは中学くらいです。

カジヤマ
そうか、かわちゃんちは能一家なのか!

そんなおうちに生まれたなら、本格的に始める前から、いつも能が日常生活のそばにあったんでしょ?

かわちゃん
―うーん、やりたかったのかな?でも稽古は嫌いじゃないんだよね。

だから、気づいたら、ひくにひけないところまで来てた。ってことは、たぶんやりたかったんじゃないかな

カジヤマ
でも能って、いろいろな役割の人がいるんでしょ?

なのに、なんでかわちゃんは大鼓なの?舞ってみたいって考えたことないの?

 

※能の舞台を作るのは、複数の担い手(演者・奏者)。
例えば主人公や地謡を担当するシテ、シテの思いを聞き出すワキなど、役割はさまざま。かわちゃんがやっているのは大鼓。
楽器はほかにも笛や太鼓などがあるが、演目によって異なる。

 

かわちゃん
―祖父も父も大鼓だったから、自然とね。

ほかの楽器をやってみようって考えはなかったかな…

 

 

今の自分に足りないもの。「経験を積む」だけしかないということ

 

カジヤマ
6歳から始めたってことは、もう20年近く、能の世界にいるわけだ。すごいね。
かわちゃん
―いや、まだ僕は修行中だよ。
カジヤマ
え、20年やってても修行中なの?
かわちゃん
―そうだね。

だから他の先生方にも「経験が足らん」って言われることがあるよ。おとうさんにも、おじさんにも言われたね。

身に着けるのも、苦手を克服するのも「経験をつむだけ」って。経験が今の僕に圧倒的に足りないものかな。

能のことをもっと知るためには、とりあえず経験して手数、場数を増やすだけだなって。
いつか傾向がつかめるのかな、って最近は納得できたよ。

カジヤマ
20年やってもまだまだって言われるのか…想像を絶する世界だ。

でも、それだけやってれば、さすがにお気に入りの演目のひとつやふたつは、あるでしょ?

かわちゃん
―いや…それがまだ出会えてないんだ。

覚え直さなくていいくらい、やりこんだ演目はあるけどね。
能には基本的に定年がないから、死ぬまでやっていけば出会えるのかな。

カジヤマ
え、定年はないの?
かわちゃん
―基本的にはね。
死ぬまでやれるってことは、死ぬまで修行なんだなって悟ったよ。

だから僕も、やれるまで続けていきたいって思うんだ。

 

 

目立ってはいけない位置で、どう役割を果たすか

 

 

カジヤマ
能って難しくない?
今まで見に行ったことないし、私にとってはすごく難しいイメージがあるんだけど。
かわちゃん
―難しい、か…たしかに大鼓をやるのは難しいよ。
カジヤマ
そりゃ、やっている方は難しいことだらけだと思うよ(笑)
それなら、かわちゃんにとって難しいって思うことは何?
かわちゃん
―僕のやっている大鼓は、能ではいわゆる「メイン」になっちゃいけないんだよね。それが難しいかな。
メインはあくまでも、主人公の「シテ」と呼ばれる人たちだから。
前に出ちゃダメなんだよ
カジヤマ
その立ち位置ってめっちゃ難しそう…
かわちゃん
―そうだよ。
だから、僕は舞台の後ろの方にいる人って意識が強いかな。後ろの方で、舞台の雰囲気を作る役割なんだって。

もし大鼓に注目するなら、ちゃんと雰囲気づくりをできているか?をチェックしながら楽しんでほしいね。

 

自分の役割や立ち位置をしっかり理解するのも、舞台を成功させるカギなのか…
つい普段の自分の振る舞いを振り返ってしまいました。

 

 

緊張はどうにもならないから、よく一人反省会しています

 

(舞台が終わった後にちょっぴり燃え尽きちゃう感じには共感)

 

カジヤマ
正直、緊張しないの?
かわちゃん
―もちろん緊張します。

たしか前は、緊張しすぎて「カツが食いたい」ってなったんだけど(笑)

カジヤマ
カツって(笑)
それってゲンかつぎってこと?
かわちゃん
―いや、普段ゲンはかつがないよ。

でも緊張するから、そのまま舞台に立つしかないです。僕にはどうしようもできないね。

カジヤマ
ああ、緊張したまま舞台に立つのか(笑)

20年もやってれば、緊張で失敗しちゃうこともあった?

かわちゃん
―もちろん失敗することもあるよ。

ミスが多すぎて、もはやよくわからなくなることもあるしね。

たぶん、若いから許されいてる面もあるんだろうけど。

カジヤマ
そうか、これが「経験を積むしかない」ってことにつながるのね。
かわちゃん
―そうそう。

「やっちゃったな…」って思ったときは、よく一人反省会もするね。

 

次に進む原動力。

 

(普段はゲンかつがなくても、急にカツが食べたくなったっていいじゃない)

 

カジヤマ
ミスや緊張のことを聞いたから、次はポジティブな面をね。

「経験を積むしかない」ってポジティブに続けていけるのは、なんでだと思う?

かわちゃん
―そうだね…ひとつ舞台が終わったあとの達成感かな。

終わったあとは「あー終わった終わった!」ってスカッとするんだ。
ひとつ終わったって思うと、ちょっと楽になるんだよね

カジヤマ
20年近くやってても、その達成感は変わらないんだね。

でも、死ぬまで大鼓をやっていくってことは、そこで終わりじゃないでしょ?

かわちゃん
―うん。
だから、舞台が終わる→達成感→また次の舞台へ、の繰り返しです

 

 

ふだん能に触れていなくても、見に行っていいの?

 

カジヤマ
ホントに私、能を見たことないんだけど、大丈夫?
チケット買って大丈夫だった?
かわちゃん
―(笑)そんな難しく考えないで、見に来てほしいのが本音です。
「難しそうだからやめよう…」ってたぶん疲れちゃうだろうから。

僕の理想は、映画に行くような感覚で来てもらえることかな

カジヤマ
え、そんな感じで見に行っていいの?
かわちゃん
―もちろん!演目の予習をしないでも、楽しんでほしいです。能の知識がなくても楽しんでもらえるように、公演の前に「解説」をすることもあるし。

 

※ここでいう解説とは…演目の前に、簡単な「噺の解説」をすること。

 

カジヤマ
え、それなら理解が深まりそうだね!
かわちゃん
―僕も解説、やったことあるよ。
カジヤマ
え、かわちゃんは舞台に上がる人なのに?
かわちゃん
―(笑)そうだね。

僕は、時代に合った「演目の仕方」が能にも必要だと思っていて。それでお客さんが増えるなら、公演の趣旨にもあわせてやっていけばいいと思うんだ。

公演によっては事前講座もあるし、イヤホンガイドで説明を聞きながら見ることもできます。

でも、チラシに少し書いてあるストーリー解説を少し読んでおくだけでも、だいたいはつかめると思うよ。

 

 

さいごに―能の世界に携わる表情と、等身大の若者の一面

 

 

旅BARでの何気ない出会いから、「能やってるの!?詳しく話を聞かせて!」という流れでこの記事を書いたのですが…

こんなにフランクに能の話を聞いてもいいのか?と驚きました。

私の「もっと教えて!」というむちゃくちゃな質問にも快く答えてくれたかわちゃん。

能の世界では超若手でも、私より年下なはずなのに受け答えが落ち着いているのにも驚きです。

 

私も実は、数年前まで役者として舞台に立っていました。

ジャンルはえらい違いですが「舞台に立つ」という点では共感できるところがちらほら。

あの「やりきった感」があるから、次の舞台に向けて走り出せるんだよね!あと、緊張はどうにもできない(笑)

 

かわちゃんが言うように「映画に行くような感覚で」って考えれば、能もぐっと身近なものになりそうです。

それならデートで行ってもいいんだもんね…!

実際デートで見に行って、正直かなり「渋いなあ」と思いましたが、そこまで敷居は高くないように感じました。

それなら、遠ざけるよりもどんどん触れていったほうがいいなと。

また見に行きたいと思ったので、これからも演じ継がれていったらいいな、と率直に思いました。

そのためにもまた、ちゃんとチケットを買って見に行きたいです。

 

 

話をしてくれた人:河村裕一郎さん/(大鼓方 石井流)

 

1994年生まれ、名古屋市出身。父も祖父も能の舞台で大鼓をやっている、能一家で生まれ育つ。
6歳ごろに初舞台を経験、中学くらいから本格的な稽古を開始。

・好きなタイプ:わからない。考えたことがない。
・好きな食べ物:魚。鮎とか
・趣味:鉄道模型、鉄道

 

(撮影:ポポンデッタ大須店)

プラレールから始まって、今は本格的な鉄道模型の制作・収集が趣味に。

趣味だって聞いたけどかなり本格的でびっくり!

 

 

河村裕一郎さんからお知らせ☆(次回の演奏予定)

 

「能に興味が出て来た!」「気になる」という人へ、耳より情報!

 

小牧山文化事業 小牧山薪能~信長の館跡に再現される幽玄の世界~
入場料:無料
日時:平成30年9月15日
観覧席開場/午後4時
(午後4時~5時には、能楽の楽器体験ができます!楽器に触れてみるチャンス。)
オープニングセレモニー/午後5時
薪能開演/午後6時

会場:小牧山 史跡公園
(小牧市)

演目:
観世流・能「巻絹 神楽留」
和泉流・狂言「鏡男」
観世流・能「鉄輪」

 

河村裕一郎さんは、観世流・能「巻絹 神楽留」に出演予定です。

入場料無料ということで、能の世界に気軽に触れるチャンスだと思います。

ご都合のあう方はぜひ。

 

 

インタビューした場所:旅BAR 夢port(名古屋市中区)

 

ガチのひとり旅好きが、名古屋「旅BAR 夢port」へ行ってきた

 







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