お世話になります。ヨーロッパ女子ひとり旅専門家のカジヤマシオリ(@Kindermer)です。
先日、名古屋能楽堂へ行ってきました。
人生で初めて、能の舞台を鑑賞。
はじめて能を見てまいりました!
古典芸能、無形文化遺産。
すべてをいっきに理解するのはまあ、無理。
でも楽しめました。いろんな見方があるんだなあ。演出とか衣装とか、微妙な間のとり方とか。
とにかく深かったです。がんばってこの体験を記事にします。#名古屋能楽堂 pic.twitter.com/YAC2nO6w7j— カジヤマシオリ/ヨーロッパ大好きトラベルライター/8号車 (@Kindermer) 2018年9月2日
ちょっぴり緊張しましたが、楽しませていただきました。
忙しい日常の中に、たまにはこういうゆっくりとした時間が必要だなあ…としみじみ。
あと、海人が成仏できたみたいで本当によかった!(演目のこと)
というのも、最近よく出入りしている「旅BAR 夢port」で知り合った、かわちゃんこと河村裕一郎さんと話したことがきっかけです。
彼は名古屋を拠点に、能の舞台で大鼓を演奏しています。
彼にインタビューをしたうえで、実際に能の舞台を見に行きました。
能という無形文化遺産を受け継ぐ人として「おおっ!」と感じる部分もあれば、同年代の若者として「うんうん」とうなずける面も。
かわちゃんがどのように能と向き合っているのか。
能に対して「とっつきにくい」「よくわからない」と考えている人に知ってほしい、インタビュー内容になりました。
目次
多分やりたかったとは思う。物心がついたときにはね。
本格的に稽古をはじめたのは中学くらいです。
そんなおうちに生まれたなら、本格的に始める前から、いつも能が日常生活のそばにあったんでしょ?
だから、気づいたら、ひくにひけないところまで来てた。ってことは、たぶんやりたかったんじゃないかな。
なのに、なんでかわちゃんは大鼓なの?舞ってみたいって考えたことないの?
※能の舞台を作るのは、複数の担い手(演者・奏者)。
例えば主人公や地謡を担当するシテ、シテの思いを聞き出すワキなど、役割はさまざま。かわちゃんがやっているのは大鼓。
楽器はほかにも笛や太鼓などがあるが、演目によって異なる。
ほかの楽器をやってみようって考えはなかったかな…
今の自分に足りないもの。「経験を積む」だけしかないということ
だから他の先生方にも「経験が足らん」って言われることがあるよ。おとうさんにも、おじさんにも言われたね。
身に着けるのも、苦手を克服するのも「経験をつむだけ」って。経験が今の僕に圧倒的に足りないものかな。
能のことをもっと知るためには、とりあえず経験して手数、場数を増やすだけだなって。
いつか傾向がつかめるのかな、って最近は納得できたよ。
でも、それだけやってれば、さすがにお気に入りの演目のひとつやふたつは、あるでしょ?
覚え直さなくていいくらい、やりこんだ演目はあるけどね。
能には基本的に定年がないから、死ぬまでやっていけば出会えるのかな。
死ぬまでやれるってことは、死ぬまで修行なんだなって悟ったよ。
だから僕も、やれるまで続けていきたいって思うんだ。
目立ってはいけない位置で、どう役割を果たすか
今まで見に行ったことないし、私にとってはすごく難しいイメージがあるんだけど。
それなら、かわちゃんにとって難しいって思うことは何?
メインはあくまでも、主人公の「シテ」と呼ばれる人たちだから。
前に出ちゃダメなんだよ。
だから、僕は舞台の後ろの方にいる人って意識が強いかな。後ろの方で、舞台の雰囲気を作る役割なんだって。
もし大鼓に注目するなら、ちゃんと雰囲気づくりをできているか?をチェックしながら楽しんでほしいね。
自分の役割や立ち位置をしっかり理解するのも、舞台を成功させるカギなのか…
つい普段の自分の振る舞いを振り返ってしまいました。
緊張はどうにもならないから、よく一人反省会しています
たしか前は、緊張しすぎて「カツが食いたい」ってなったんだけど(笑)
それってゲンかつぎってこと?
今でも緊張するから、そのまま舞台に立つしかないです。僕にはどうしようもできないね。
20年もやってれば、緊張で失敗しちゃうこともあった?
ミスが多すぎて、もはやよくわからなくなることもあるしね。
たぶん、若いから許されいてる面もあるんだろうけど。
「やっちゃったな…」って思ったときは、よく一人反省会もするね。
次に進む原動力。
「経験を積むしかない」ってポジティブに続けていけるのは、なんでだと思う?
終わったあとは「あー終わった終わった!」ってスカッとするんだ。
ひとつ終わったって思うと、ちょっと楽になるんだよね。
でも、死ぬまで大鼓をやっていくってことは、そこで終わりじゃないでしょ?
だから、舞台が終わる→達成感→また次の舞台へ、の繰り返しです。
ふだん能に触れていなくても、見に行っていいの?
チケット買って大丈夫だった?
「難しそうだからやめよう…」ってたぶん疲れちゃうだろうから。
僕の理想は、映画に行くような感覚で来てもらえることかな。
※ここでいう解説とは…演目の前に、簡単な「噺の解説」をすること。
僕は、時代に合った「演目の仕方」が能にも必要だと思っていて。それでお客さんが増えるなら、公演の趣旨にもあわせてやっていけばいいと思うんだ。
公演によっては事前講座もあるし、イヤホンガイドで説明を聞きながら見ることもできます。
でも、チラシに少し書いてあるストーリー解説を少し読んでおくだけでも、だいたいはつかめると思うよ。
さいごに―能の世界に携わる表情と、等身大の若者の一面
旅BARでの何気ない出会いから、「能やってるの!?詳しく話を聞かせて!」という流れでこの記事を書いたのですが…
こんなにフランクに能の話を聞いてもいいのか?と驚きました。
私の「もっと教えて!」というむちゃくちゃな質問にも快く答えてくれたかわちゃん。
能の世界では超若手でも、私より年下なはずなのに受け答えが落ち着いているのにも驚きです。
私も実は、数年前まで役者として舞台に立っていました。
ジャンルはえらい違いですが「舞台に立つ」という点では共感できるところがちらほら。
あの「やりきった感」があるから、次の舞台に向けて走り出せるんだよね!あと、緊張はどうにもできない(笑)
かわちゃんが言うように「映画に行くような感覚で」って考えれば、能もぐっと身近なものになりそうです。
それならデートで行ってもいいんだもんね…!
実際デートで見に行って、正直かなり「渋いなあ」と思いましたが、そこまで敷居は高くないように感じました。
それなら、遠ざけるよりもどんどん触れていったほうがいいなと。
また見に行きたいと思ったので、これからも演じ継がれていったらいいな、と率直に思いました。
そのためにもまた、ちゃんとチケットを買って見に行きたいです。
話をしてくれた人:河村裕一郎さん/(大鼓方 石井流)
1994年生まれ、名古屋市出身。父も祖父も能の舞台で大鼓をやっている、能一家で生まれ育つ。
6歳ごろに初舞台を経験、中学くらいから本格的な稽古を開始。
・好きなタイプ:わからない。考えたことがない。
・好きな食べ物:魚。鮎とか
・趣味:鉄道模型、鉄道
プラレールから始まって、今は本格的な鉄道模型の制作・収集が趣味に。
趣味だって聞いたけどかなり本格的でびっくり!
河村裕一郎さんからお知らせ☆(次回の演奏予定)
「能に興味が出て来た!」「気になる」という人へ、耳より情報!
小牧山文化事業 小牧山薪能~信長の館跡に再現される幽玄の世界~
入場料:無料
日時:平成30年9月15日
観覧席開場/午後4時
(午後4時~5時には、能楽の楽器体験ができます!楽器に触れてみるチャンス。)
オープニングセレモニー/午後5時
薪能開演/午後6時
会場:小牧山 史跡公園
(小牧市)
演目:
観世流・能「巻絹 神楽留」
和泉流・狂言「鏡男」
観世流・能「鉄輪」
河村裕一郎さんは、観世流・能「巻絹 神楽留」に出演予定です。
入場料無料ということで、能の世界に気軽に触れるチャンスだと思います。
ご都合のあう方はぜひ。