【保存版】フェルメール作品を徹底解説!~アムステルダム国立美術館編~

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オランダ

お世話になります。ヨーロッパ女子ひとり旅専門家のカジヤマシオリ(@Kindermer)です!
以前からちょこちょこ話題にもしているのですが、私はヨーロッパを旅する中で、フェルメール作品を見てまわってます。

中でも、フェルメールの故郷であるオランダで見るフェルメール作品は、やはり格別です。

そりゃ日本に来日した時に観ても感動ものですが、彼が17世紀オランダの生活風景をよく描いていたというのも理由じゃないかと思います。

そこで、オランダを旅行するなら知っておきたい、オランダで見られるフェルメール作品を解説したいと思います。

オランダではアムステルダム国立美術館と、マウリッツハイス美術館に作品があります。所蔵する美術館の解説もちょこっと入れたいので、美術館ごとにまとめて掲載していきたいと思います。まずはアムステルダム国立美術館から。

学生時代にいちおうフェルメールをテーマに論文を書いておりますゆえ、オランダで「フェルメール作品を見て回る旅がしたい!」「オランダの美術の歴史が知りたい!」「美術館めぐりがしたい!」って人にも参考になると思います。

 

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アムステルダム国立美術館

オランダの首都・アムステルダムにある「アムステルダム国立美術館」は、国内で最大規模のミュージアムです。ここでは、計4点のフェルメール作品を所蔵しています。

12世紀から近代まで、はばひろーい年代のオランダ美術を展示しています。

特筆すべきは17世紀オランダの美術品。世界史の授業でも出てきますが、この時期のオランダは「黄金時代」。海上貿易により国が潤い、富裕層にとって美術品の需要があった時代です。

フェルメールが活躍していた時期も、この年代に相当します。

当然、フェルメール作品も美術館を代表するような存在です。17世紀オランダの美術品のコレクションは、世界でここが一番クオリティ高いんじゃないかっていうくらい…

この美術館にあるフェルメール作品から、紹介していきますね。

小路(1658年ごろ)

アムステルダムだけじゃなくて、オランダのあちこちを旅したいと思っている人。オランダ郊外の風景が好きな人。当てはまるなら、とくにアート好きでなくても見てほしいと思う作品です。

「小路」でフェルメールが映し出したのは、ごくシンプルな風景。17世紀のオランダならどこにでもありそうな赤レンガの家です。現在もこの面影を残したような景色が、オランダには残っています。

この作品に描かれた人は、通路の奥にいる女性と、軒先で編み物をする女性、そして2人の子ども。モチーフというよりも、古き良きオランダを感じさせる風景のひとつとして溶け込んでいます。

異国の風景なのに、どこか懐かしく、あたたかさがあります。

窓枠の木目や、赤レンガの質感も見事に描いています。私はいつも、見入っているとこの絵の中にひきずりこまれてしまいそうな感覚に陥ります。




牛乳を注ぐ女(1658年ごろ)

陶器のびんを傾け、中に入っていた牛乳を別の器に移し替える女性…

女性はこちらへ目線をやることなく、牛乳を注ぐという行為に集中しています。
その一瞬をあまりにもリアルに切り取った作品です。

日常をただ切り取っただけのこの作品には、正直、豪華さやきらびやかさは感じられません。描かれた女性も美人かといわれると「うーん」って感じです。

豪華な装飾品がないことから、この女性は庶民の家庭にいるんだろうな、と想像できます。
典型的な美しさというよりも「あたたかみ」の感じられる作品だと思います。

彼女が腕まくりした袖からのぞくのは、わりとがっちりした腕。この「肝っ玉かあちゃん」的な感じも、作品の持つあたたかみの一因なんだろうか…?

とはいっても、女性はとても寒い場所にいるんでしょうね…

窓からは少し日のひかりが差し込んでいますし、女性は腕まくりしているんですが、彼女の足元には小さな箱が。これは足温器(足元用のちいさなストーブ)です。足元あっためてないとやってらんないくらい寒いのかな…

手紙を読む青衣の女(1662~1663年ごろ)

「牛乳を注ぐ女」と同じく、女性を中心にすえた作品です。

ですが、先ほどの女性が鮮やかな黄色いトップスを着ていたのに対して、こちらは澄み切ったライトブルーです。リボンのような装飾がついていて、髪の毛もアップにして、後れ毛を残しているよう。どちらかというと、こちらの絵のほうが「おしゃれ」な要素が入ってます。金銭的にも裕福そう。

一心に手紙を読む女性。こちらをちらりとも観ません。フェルメールが得意とした「日常の一瞬を切り取った」作品です。凝視するくらいの手紙の差出人、いったい誰なんでしょうか。

一応、彼女のいる向こう側の壁には大きな地図がかけられています。この地図が手紙の内容に関係しているのなら、きっと彼はこの大海原を舞台に仕事をしているんじゃないでしょうか。

17世紀のオランダは、海上貿易で大繁栄した時代ですから、船の上からの便りであってもおかしくないです。この時代の航海は命の危険を伴うもの。

返事が届くかどうか気が気じゃなくて、届いたうれしさで食い入るように手紙を読んでいるのかな?

ドレスやいす、テーブルクロスなど、余すことなく使われた美しい青色にも注目です。しかもすべて濃淡が異なります。私もこのブルーの美しさに完全に浸かってしまった一人です。




恋文(1669~1670年ごろ)

「手紙を読む青衣の女」と同じく、手紙がモチーフとなった作品です。

ですが中心には女性が二人。後ろの女性が、椅子に腰かけた女性に手紙を持ってきた瞬間のようです。ここでも「瞬間」を切り取っているんです。その様子を、部屋の入り口越しに見ているという構図。「のぞき見」しているような錯覚に陥ります。

そんなシチュエーションが私的にツボなんです。

「恋文」というタイトル。いわゆるラブレターなわけですが、この作品のどこに恋の要素があるのでしょうか。

手紙を受け取った女性は、左手にシターン(弦楽器)を手にしています。シターンは、西洋絵画において恋愛を暗示するモチーフです。

加えて、二人の背後の壁にかかっている絵。2枚あるうち下のほうは、船の帆が描かれています。いわゆる海の絵ですね。海の絵というのは、手紙を受け取った女性の心情を描いたといわれています。

荒れていれば望み薄、穏やかなら、まさに順風満帆の恋愛といったところ。

わりとぼやけて描かれているものの、雲がもくもくとあがり、空も青く澄んでいて、とりあえず荒れてないのはわかります。ああ、よかった。

フェルメール作品の「盗難」物語

ちなみに「恋文」は1971年に「盗難」にあっています。

ベルギー・ブリュッセルの美術館に貸し出し中のことでした。しかも犯人は、オランダ・ベルギー両政府に対して東パキスタン難民へ高額な義援金を払えと脅迫します。

いちおう犯人は捕まって絵も戻ってきたものの、強引かつ手荒に盗まれたことで、状態はめちゃくちゃだったそう。必死の修復がされましたが、今展示されているのは、フェルメールと修復家の筆が入り混じっています。

この作品を見てると、いつもやりきれない気持ちになるんです。

フェルメール作品はしばし盗難の「被害者」になります。「恋文」の場合は義賊でしたが、犯人はお金が欲しかったり、囚人の開放を望んだりなど、目的はいろいろのようです。

もっと知りたい!という人は、新潮社の「盗まれたフェルメール」(朽ち木ゆり子)を読むことをおすすめします。確か10年前くらいに購入し、数えきれないほど読みました。

フェルメールほどに人気が高く、かつ世界に30余点しかないという希少性がある画家はそうそういないと思います。国を巻き込むほどの事態に発展するのも、フェルメール作品がそのような事実にあるからでしょう。

「盗まれた」という事実が、フェルメール作品の神秘性をより高めているような気がするのです。

 

見逃せないフェルメール作品揃い

アムステルダム国立美術館で見ることができるのは、すばらしいフェルメール作品ばかりです。

と口で言ってしまえば簡単なのですが、自分の語彙力では到底表すことができないような「尊い」作品たちです。

それと併せて、フェルメールと同時期に活躍した画家たちの作品も観ることができるのもうれしい。こんな機会そうそうない。

この解説が少しでもお役に立てればうれしいです。

しかし予備知識なしでも、ストレートにフェルメール作品の「尊さ」を感じ取っていただけるかと思います。

アムステルダム国立美術館で、フェルメール作品との時間を堪能してくださいね!

 



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