こんにちは。ヨーロッパ女子ひとり旅専門家のカジヤマシオリ(@Kindermer)です。
名古屋市博物館で開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチと【アンギアーリの戦い】展」に行ってまいりました。
若干出遅れた感があるものの…(笑)2015年には東京富士美術館で、ほぼ同じ内容の展覧会が開催されていたようですね。
2018年3月25日まで名古屋市博物館、4月6日~6月3日のあいだは福岡市博物館にて開催。
まだ会期ははじまったばかりだ!!
誰もが知るイタリア・ルネッサンス期の巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
彼による、完成することのなかった大作「アンギアーリの戦い」という作品を軸にした展覧会です。
展覧会は写真撮影禁止ですが…
とても興味深い展示だったので、その様子のレポートと、知っておいたら鑑賞がおもしろくなるようなポイントも併せて紹介します。
目次
「アンギアーリの戦い」が描かれた背景
「アンギアーリの戦い」とは、1440年、イタリア・ミラノ軍とフィレンツェ軍の間で起こった戦いのこと。
勢力を広げようとしているミラノ軍に対して、フィレンツェ軍は周りの国と協力して、見事勝利しました。
レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたのは、フィレンツェ軍の勝利をたたえる意味合いのある壁画でした。
ダ・ヴィンチはフィレンツェ共和国のニッコロ・マキャヴェッリの依頼でヴェッキオ宮殿(当時はフィレンツェ政庁舎)の大広間の壁に下絵を描いたものの、完成させることができませんでした。
ですが、その下絵の模写や派生作品が今も残っているので、そこからレオナルド・ダ・ヴィンチのすばらしい仕事を知ることは可能です。
ヴェッキオ宮殿の大広間。
この大きな広間の壁に、壁画をつくろうとしていたそうです。
今は下絵は失われ、その上に別の画家の壁画が描かれています。
「アンギアーリの戦い」を想像する
ミラノにある「最後の晩餐」も、ダ・ヴィンチが残した壁画として有名なもののひとつ。私が実際に観た際も、浸蝕がすすんでるなーといった印象を受けました。
ダ・ヴィンチは、存命時からすばらしい画家として名をはせていました。壁画の依頼も多く受けています。
「アンギアーリの戦い」は下絵のみが残りましたが、そのすばらしさを聴きつけて、数々の画家が模写に訪れました。
今はその下絵を確認することはできないけれど、模写を見れば彼の技術力を知ることができます。
その中でも特に貴重な「タヴォラ・ドーリア(ドーリア家の板絵)」が、ここでは注目作品として展示されています。
チケットやポスターでもでかでかとアピールしてるこの作品です。
兵士や馬のダイナミックな動き、リアリティのある表情…ダ・ヴィンチ本人の作品ではありませんが、じゅうぶんに惹きつけられるクオリティです。
また、壁への下絵自体が部分的にしか残らなかったので、模写作品は部分的なものが多いです。
逆に「こんな感じの作品を描こうとしてたのかな」と、想像が広がります。
模写には残っていない背景や多くの兵士の戦う姿を、自ら想像して描いたものが展示されていました。
天気は晴れ、はるか向こうには船が浮かぶ…といった具合に。
17世紀フランドルの巨匠、ルーベンス(に帰属する)の模写も見ることができます。彼の活躍した時代にはすでに下絵はなくなっていたけれど、それの模写資料を手に入れて描いたようです。
もちろんダイナミックで臨場感ある作品でしたが、それ以上に優美さも感じたような気がします。ルーベンスの神々しさ…
あわせて、彼の観察力にも脱帽します。ダ・ヴィンチの技法をとことん観察し、自分の技術をフル活用して見事に表現しているのです。
やっぱりうっとりするよね。
そしてアンギアーリの戦いが起きた歴史的背景、描かれた当時のフィレンツェの様子なども知ることで、理解が深まりました。
ダ・ヴィンチの頃とそれ以前の、フィレンツェ、シニョーリア広場の風景画も展示がありました。
ダ・ヴィンチの頃はミケランジェロによる「ダビデ像」の姿が描きこまれてますが、それ以前のものには見当たりません。
それを比較するのも楽しい。実際に訪れた場所をこうやって目にするのはやはり楽しいですね。
(少々ダビデ像が大きすぎる気がしないでもなかったけど)
ミケランジェロによる「カッシナの戦い」
レオナルド・ダ・ヴィンチが手掛けた壁画「アンギアーリの戦い」には、実はもうひとつのストーリーが。
ダ・ヴィンチよりも30歳近く年下の画家ミケランジェロが、同じ広間で壁画を描いていたというのです。
彼が依頼を受けたテーマが「カッシナの戦い」。
こちらはミラノ軍ではなく、ピサ軍とフィレンツェ軍の戦いです。
こちらもフィレンツェ軍が勝利しており、ダ・ヴィンチと同じようにその勝利をたたえる目的で依頼されました。
フィレンツェの街中で出くわすと、罵声を浴びせるような間柄だったミケランジェロとダ・ヴィンチ。
「よきライバル」という雰囲気ではなかったそうです。
そんな関係だから、同じ広間の壁画を担当するということは勝負のような意味合いもあったのです。競作というやつですね。
しかしミケランジェロも、下絵だけを残してフィレンツェを去りました。この勝負はドローです。なんという結末。
ミケランジェロの下絵も同様に、他の画家によって模写がさかんに行われてました。
この展覧会にも、その模写が展示されています。
「アンギアーリの戦い」が激しくぶつかり合う様子を描いているのに対し「カッシナの戦い」は戦いの前、水浴びをする様子…あまりにも対照的でした(;’∀’)
全裸の兵士たちの、ムッキムキの肉体。肉体美を追求したミケランジェロらしいといえばそうなのですが。
人体の構造を熟知しているダ・ヴィンチにはできないような表現で、自分の技術力を示そうとしていたことが伺えました。
レオナルド・ダ・ヴィンチの真作は、展示されていません。
展覧会タイトルに「レオナルド・ダ・ヴィンチ」という文字があるので、おそらく、勘違いしている人も多いと思いますが…
レオナルド・ダ・ヴィンチの作品の展示は、ありません。
にもかかわらずタイトルがこんな感じなので、勘違いした人がやってきて「アレ?」ってなってそう。ですがダ・ヴィンチ本人の作品は、一枚もありません。
あっても「レオナルド・ダ・ヴィンチ(に帰属する)」作品。だから本人の作品じゃないのよ…
完成作はほとんど現存しないし、海を越えて日本に持ってくるのも大騒動だからね…(笑)
とはいえがっかりするかと思いきや、そうでもない。
がっかりしませんよ!
ダ・ヴィンチ本人の作品がない中で、関連作品から彼の功績をみていくのもおもしろかったですよ。
模写もいろいろあって、見比べていくのが楽しい。
そして「ダ・ヴィンチ先生すげーなあ…」と感心しました。
ダ・ヴィンチの功績を知っていたり、ミケランジェロとの関係もわかってたりすれば、きっと興味深い展示だらけ。
スケッチのコピーからでも技術力はわかるし、音楽や科学分野でも功績を残していることを伝える復元展示もあった。
展示そのものの数はあまり多くないけれど、音声ガイドといっしょにひとつひとつをじっくり見ていくのがおすすめ。
個人的に気に入ったのは、ダ・ヴィンチが描いた「レダと白鳥」の模写。ルネサンス期の画家がこぞって用いたテーマだそう。
レダという女性に一目ぼれしたゼウス(ギリシア神話の神)が白鳥の姿になって、彼女を誘惑したというストーリー。
レダと白鳥の傍らには、たまごからかえる双子の子ども×2…
作者はわからないけれど、レダの官能美にうっとりしてしまいました。
ダ・ヴィンチのものが現存していないのが残念。
模写とあなどるなかれ。ダ・ヴィンチはすばらしいぞ!
博物館の外には、こういう説明のパネルも。わかりやすい内容で、会場へ向かうのもわくわく。
さらに「アンギアーリの戦い」を紐解くヒントとして、2次元から3次元へと再現する試みも。
細部まで忠実に再現した立体復元が展示されていました。
レオナルド・ダ・ヴィンチの功績や、彼による「アンギアーリの戦い」がすばらしかったことを感じ取れる展示だったと思います。
やはりアンギアーリの戦いというテーマに疎かったり、レオナルド・ダ・ヴィンチのことをよく知らなかったりすると、なかなか難しい流れの内容だったかもしれない。
ということで音声ガイドを聴きながら鑑賞するのをおすすめします。細かい時代背景や歴史事情も解説しててわかりやすかったです。
気になる混み具合。平日ならゆったり鑑賞できそう!
おもしろい展示ではあるけれど、やはりレオナルド・ダ・ヴィンチの本物はないので…
平日なら超混みということもなく見れると思います。
私は平日の3時半から鑑賞しましたが、人がまばらで集中できました。私のスピードだと1時間半くらいかかりました。
日本にいるとルネサンス期の画家の作品に触れる機会は少ないと思うので、興味のある方は、この機会にぜひ!




コメント
[…] […]
[…] […]